「これまで不文律だった経営の自立性が明文化されたことは日産にとって大きな節目だ」
日産自動車のカルロス・ゴーンCEO(最高経営責任者)は12月15日に開いた会見でこう述べた。資本提携をする日産・ルノー連合は、2016年4月にルノーの筆頭株主である仏政府の議決権が倍増し、連合の経営への関与が強まることを懸念。資本関係の見直しを含む対抗策を検討してきたが、最終的には仏政府が譲歩する形で収束した。
12月12日の未明、日産はルノー、仏政府との間で経営の自主性を維持することで合意したと発表。具体的には、仏政府の議決権が制限され(仏国内の戦略などは除く)、ルノーは日産の経営に干渉しない方針を正式に認めるというものだ。
■ルノーへの出資比率引き上げは伝家の宝刀
加えて、日産は重要な権利を得ることができた。日産は自社の経営判断に対してルノーから不当な干渉を受けたと判断した場合、ルノーへの出資比率を引き上げることが可能になった。ルノーは日産の筆頭株主で議決権を持つが、日本の会社法の規定では、日産がルノー株の25%以上(現在は15%)を持つと、ルノーが持つ日産株の議決権が停止される。ルノーを通じた仏政府の日産への影響力を遮断できる。
従来、日産はルノーの取締役会の事前承認なしにルノー株の売買をすることが認められていなかった。2002年に仏政府、ルノー、日産の資本関係がほぼ出来上がった際、日産とルノーの間で結んだ契約によって制約を受けていた。日産からすると不平等な契約だが、今回、それが見直される。「これまでは丸腰だったが、伝家の宝刀を手に入れることができた」と日産幹部は語る。
ルノーの現在の時価総額は約3兆5000億円(1ユーロ=133円換算)。日産がルノーへの出資比率を25%に引き上げるのに必要な資金は約3500億円となる(時価総額ベース)。日産の自動車事業のネットキャッシュは約1兆4700億円(2015年9月時点)。ルノー株を買い増す上ではハードルは低いように思われる。
しかし、ルノーから43.4%の出資を受ける日産は仏商法の制限で元々ルノーの議決権を有していないため、日産がルノー株を25%以上まで買い増すと、双方に議決権がない状態になる。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストは「日産が巨額の資金を投じてルノー株を買い増し、お互いに議決権のない株を持ち合う構造は何らメリットがない」とした上で、「日産の権利は抑止力としての核兵器のようなものだ」と分析する。
実際、日産の西川廣人CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)も「この権利は抑止力で使わなければ使わないに越したことはない」と強調する。
これまで、日産・ルノー連合は2社のCEOをゴーン氏が兼任することで仏政府を交えた3者の微妙なバランスを取ってきた。ゴーン氏が2社のCEOであり続ける限り、日産がルノー株を買い増すような「非常事態」は起こらないと言えそうだ。
問題はゴーン氏が退任した後にある。ルノーには、CEOの定年は65歳だが、任期中に再任されればさらに4年間継続できるというルールがある。現在61歳のゴーン氏がルノーCEOの任期を迎えるのは64歳だが、再任されれば、68歳まで定年を延長できる。仮にあと7年間、両社のCEOを務めたとしても、いずれ去る日がやってくる。
■日産・ルノー連合で自動車トップ3を目指す
西川CCOは「5年、10年先の将来を見据えて、次の世代の人が(日産・ルノー)連合を発展させていくベースの枠組みを作った」と語り、ポストゴーン体制も念頭にあったと言える。
日産とルノーは2014年4月に研究開発、生産技術、購買、人事の主要4機能を統合し、コックピットやエンジンなどで「CMF」と呼ばれるモジュール化を加速させている。
日産・ルノー連合の今後について、ゴーン氏は「合併は時期尚早で、シナジー効果を出すための障壁を解消していく」とした上で、「2016年に(機能統合の)もう一つのステップを発表する」と宣言。難交渉の決着を受け、カリスマ経営者の意識は既に次の戦術に移っている。
今回の合意でルノーが発表した声明には、「今後の数年間で連合が世界のトップ3入りを目指す上で必須のステップ」とある。2014年、日産・ルノー連合の世界販売は850万台で4位。1000万台前後のトップ3(トヨタ、VW、GM)との距離を任期中にどう縮めていくか、2社のCEO兼務が11年目に入ったゴーン氏にとっては、今後は自身の仕事を仕上げていく時期になりそうだ。
正真正銘 日産とルノーは対等な立場になった。
「これまで不文律だった経営の自立性が明文化されたことは日産にとって大きな節目だ」
日産自動車のカルロス・ゴーンCEO(最高経営責任者)は12月15日に開いた会見でこう述べた。資本提携をする日産・ルノー連合は、2016年4月にルノーの筆頭株主である仏政府の議決権が倍増し、連合の経営への関与が強まることを懸念。資本関係の見直しを含む対抗策を検討してきたが、最終的には仏政府が譲歩する形で収束した。
12月12日の未明、日産はルノー、仏政府との間で経営の自主性を維持することで合意したと発表。具体的には、仏政府の議決権が制限され(仏国内の戦略などは除く)、ルノーは日産の経営に干渉しない方針を正式に認めるというものだ。
■ルノーへの出資比率引き上げは伝家の宝刀
加えて、日産は重要な権利を得ることができた。日産は自社の経営判断に対してルノーから不当な干渉を受けたと判断した場合、ルノーへの出資比率を引き上げることが可能になった。ルノーは日産の筆頭株主で議決権を持つが、日本の会社法の規定では、日産がルノー株の25%以上(現在は15%)を持つと、ルノーが持つ日産株の議決権が停止される。ルノーを通じた仏政府の日産への影響力を遮断できる。
従来、日産はルノーの取締役会の事前承認なしにルノー株の売買をすることが認められていなかった。2002年に仏政府、ルノー、日産の資本関係がほぼ出来上がった際、日産とルノーの間で結んだ契約によって制約を受けていた。日産からすると不平等な契約だが、今回、それが見直される。「これまでは丸腰だったが、伝家の宝刀を手に入れることができた」と日産幹部は語る。
ルノーの現在の時価総額は約3兆5000億円(1ユーロ=133円換算)。日産がルノーへの出資比率を25%に引き上げるのに必要な資金は約3500億円となる(時価総額ベース)。日産の自動車事業のネットキャッシュは約1兆4700億円(2015年9月時点)。ルノー株を買い増す上ではハードルは低いように思われる。
しかし、ルノーから43.4%の出資を受ける日産は仏商法の制限で元々ルノーの議決権を有していないため、日産がルノー株を25%以上まで買い増すと、双方に議決権がない状態になる。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹アナリストは「日産が巨額の資金を投じてルノー株を買い増し、お互いに議決権のない株を持ち合う構造は何らメリットがない」とした上で、「日産の権利は抑止力としての核兵器のようなものだ」と分析する。
実際、日産の西川廣人CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)も「この権利は抑止力で使わなければ使わないに越したことはない」と強調する。
これまで、日産・ルノー連合は2社のCEOをゴーン氏が兼任することで仏政府を交えた3者の微妙なバランスを取ってきた。ゴーン氏が2社のCEOであり続ける限り、日産がルノー株を買い増すような「非常事態」は起こらないと言えそうだ。
問題はゴーン氏が退任した後にある。ルノーには、CEOの定年は65歳だが、任期中に再任されればさらに4年間継続できるというルールがある。現在61歳のゴーン氏がルノーCEOの任期を迎えるのは64歳だが、再任されれば、68歳まで定年を延長できる。仮にあと7年間、両社のCEOを務めたとしても、いずれ去る日がやってくる。
■日産・ルノー連合で自動車トップ3を目指す
西川CCOは「5年、10年先の将来を見据えて、次の世代の人が(日産・ルノー)連合を発展させていくベースの枠組みを作った」と語り、ポストゴーン体制も念頭にあったと言える。
日産とルノーは2014年4月に研究開発、生産技術、購買、人事の主要4機能を統合し、コックピットやエンジンなどで「CMF」と呼ばれるモジュール化を加速させている。
日産・ルノー連合の今後について、ゴーン氏は「合併は時期尚早で、シナジー効果を出すための障壁を解消していく」とした上で、「2016年に(機能統合の)もう一つのステップを発表する」と宣言。難交渉の決着を受け、カリスマ経営者の意識は既に次の戦術に移っている。
今回の合意でルノーが発表した声明には、「今後の数年間で連合が世界のトップ3入りを目指す上で必須のステップ」とある。2014年、日産・ルノー連合の世界販売は850万台で4位。1000万台前後のトップ3(トヨタ、VW、GM)との距離を任期中にどう縮めていくか、2社のCEO兼務が11年目に入ったゴーン氏にとっては、今後は自身の仕事を仕上げていく時期になりそうだ。
正真正銘 日産とルノーは対等な立場になった。

